現代のまちづくりは近代におこった経済性、合理性を追求する大都市計画における問題点、特定の社会層による純化よっておきる都市の多様性の老化や住民の追い出しを反省し、都市をかたちづくる仕組みにおいてより民主的にすることでこれを克服しようとしてきた。

不動産としてのみ建築や都市を扱い、消耗品の商品として都市をつくることで一時的には経済的に活性化するが、消費期限が切れたのちもその都市に住まう人々はその地に住み、生活を続けてゆかなくてはならない。大都市へ通勤する衛星都市はマンパワーを集中させるという経済的合理性にはかなっているものの、その生活空間においては高速道路や鉄道などの都市インフラが侵入し、日々の生活の豊かさを奪ってしまっている。

大都市間で行われる経済的交換と同時に一人の人間が生きてゆく経済もともにある、現代のまちづくりとはこの両方の経済をグラデーションやゾーニングなどのデザインによってE・ハワードの基本構想において希求された田園と大都市の両方の長所を重ね合わせた都市を実現しようとするものだともいえる。
交通網の発達した現代においては自身のまちの歴史的アイデンティティも経済に組み込まれる。

このいわば大きな経済と小さな経済のうち小さな経済を自立させる試みは外からのトップダウン的な手法によっては達成されえず、小さな経済を構成する人々自身が引き受けてゆかなければならない。具体的には




まちづくりにはハード面だけでなくソフト面での仕組みの必要になる
東日本大震災によって歴史的価値を持つ建物が多く損壊した、その中で既に登録有形文化
財などの国が保存のための支援を行っている目録に登録されている建物は保存されるよう
な社会的仕組みがある程度整えられているが、いまだ登録されていない建物、また国の要
録条件には合わないが、地域にとっては保存、継承されてゆく価値のある建物はまだまだ
保存のための社会的な仕組みが作られていない。より幅の広い建築を保存し、多様なまち
づくりを可能にするためには国や行政組織の対応を待っていたのでは間に合わない。市民
自身の手でまちづくりのビジョンを共有し、合意のプラットフォームを形成して積立金を
集めたり、一定の人数での合意が形成できれば行政と協力して、例えば地方自治体による
まちづくりのための徴税を整えることも考えられるだろう。
しかし一口にまちづくりの合意形成といってもゼロから提案することは至難である、まず
は市民それぞれが自分のまちのどこに魅力を感じているかを見える形で示すイメージマッ
プづくりやそれを基底にした市民の要望を集計し共同して企画を進められるプラットフォ
ームをつくってゆくなどの都市計画デザインの手法が有効となる。
また城下町のようにひとつの建物を中心としてまちづくりのイメージがつくられてゆくも
のもある。


まちの景観を支える技術者の育成や経済的自律の支援などの地域単位での解決が難しいと
思われる範囲については国の支援が必要となる。